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千葉地方裁判所 平成元年(ワ)1656号 判決

原告

岸匠美

右法定代理人親権者母

岸まき子

右訴訟代理人弁護士

中川明

大島有紀子

鈴木牧子

被告

甲野一郎

右訴訟代理人弁護士

菊池善十郎

被告

習志野市

右代表者市長

三上文一

右訴訟代理人弁護士

田宮甫

堤義成

鈴木純

行方美彦

吉田繁實

白土麻子

主文

一  被告習志野市は、原告に対し、金五五万円及びこれに対する昭和六一年七月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告習志野市に対するその余の請求及び被告甲野一郎に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用中、原告に生じた費用及び被告習志野市に生じた費用の各五分の一を被告習志野市の負担とし、原告及び被告習志野市に生じたその余の費用並びに被告甲野一郎に生じた各費用を原告の負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、連帯して金三八〇万円及びこれに対する昭和六一年七月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 原告(昭和四七年一一月九日生)は、昭和六一年当時、習志野市立第七中学校(以下「本件中学校」という。)二年に在学していた。

(二) 被告甲野一郎(以下「被告甲野」という。)は、右当時、教諭として本件中学校に勤務し、原告の属していた二年六組を担任し、体育主任、サッカー部の顧問などを務めていた。

(三) 被告習志野市(以下「被告市」という。)は、本件中学校を設置し、その管理、運営をしている。

2  公務員の不法行為

(一) 被告甲野の加害行為及び原告の負傷

被告甲野は、昭和六一年七月三日午後零時五〇分ころ、本件中学校二年六組の教室において、原告を床に正座させ、教壇の椅子に腰掛けたままの姿勢で、原告の顔面を運動靴を履いた右足で、二度にわたって蹴りつけた(以下これを「本件行為」という。)。

原告は、右行為により、左下顎打撲、上前歯牙脱臼、下口唇裂傷、不正咬合(臼歯部開咬)の傷害を負い、同年一二月八日まで治療を余儀なくされた。

(二) 訴外亡三橋良男の職務違反行為

訴外亡三橋良男(以下「三橋校長」という。)は、被告甲野の本件行為がなされた当時、本件中学校の校長の地位にあった。

右三橋は、校長として安全管理義務があるのに、本件中学校において、体罰と称する暴力が蔓延し、その中で被告甲野が些細なことで激昂し、再三にわたって安易に暴力的な生徒指導を繰り返していた事実を熟知しながら、注意も与えず、同被告の暴力的な生徒指導を容認していた。

被告甲野の本件行為は、体罰の禁止についての十分な指導監督をすべき職務上の義務があった三橋校長が重大な過失によってその義務を懈怠したことによって誘発されたものというべきである。

3  責任

(一) 被告市

被告甲野は、本件当時、被告市の公権力の行使にあたる公務員であって、その職務を行うについて、故意に本件行為に及んだものであり、また、本件当時の本件中学校の校長三橋良男(以下「三橋校長」という。)は、被告市の公権力の行使にあたる公務員であり、同人には、校長として教員に対する指導・監督義務があるのに、従前から被告甲野が再三にわたり暴力的な生徒指導を繰り返していた事実を熟知しながら、これを容認していた重大な過失による職務違反行為があったものであるから、被告市は、国家賠償法一条一項に基づき原告の損害を賠償すべき責任を負う。

(二) 被告甲野

公務員は被害者に対し個人責任を負わないと一般的に解されているが、被告甲野の本件行為のように常習的に行われた体罰であって、傷害罪に該当する違法性の極めて高い故意による犯罪行為の場合には、当該公務員個人も民法七〇九条により賠償責任を免れないというべきである。

4  損害

(一) 慰謝料

(1) 原告は、クラスメイトが注目する中での被告甲野の本件行為によって、名誉を著しく傷つけられ、教師に対する不信感に苦しみ、一学期、二学期と登校拒否に陥って学習及び運動の機会を奪われ、五か月にわたって東京歯科大学千葉病院への通院を余儀なくされるなど、身体的、精神的に重大な苦痛を受けた。

(2) また、被告甲野の本件行為の後、三橋校長は、原告の母岸まき子(以下「まき子」という。)不在の学級懇談会において、被告甲野を擁護するような報告をして、出席した父母らの間に、被告甲野を擁護する雰囲気を醸成させて、本来被害者である原告やまき子を孤立させ、また、被害者である原告からは事実を確認せず、加害者である被告甲野から聴取した誤った事実のみに基づき事故報告書を作成して、これを市教育委員会に提出し、市教育委員会は、右事故報告書の内容が、まき子から聴取していた事実と食い違っていることを知りながら事実を調査せず、右事故報告書記載の事実に基づいて被告甲野に対し、口頭の訓告処分や配置転換を行い、更に、右報告書を市議会において発表するなどした。

これに対し、原告は、被告市に対して、右事故報告書の内容の訂正を求めたが、被告市は、一切聞き入れなかった。

こうした三橋校長の行為や被告市の教育関係者らの不誠実な対応によって原告の精神的苦痛は増幅された。

(3) 学校現場からすべての暴力を追放し、教育基本法の理念に基づく教育を再生するためには、教師の体罰と称する暴力があったときは、抑止的、制裁的な損害賠償責任を認めることが必要である。

(4) 以上により、原告は、慰謝料の一部として三〇〇万円を請求する。

(二) 弁護士費用

原告は、本件訴訟の弁護士報酬として、八〇万円を原告訴訟代理人らに支払うことを約束した。

5  よって、原告は、被告らに対し、連帯して、被告市については国家賠償法一条一項に基づき、被告甲野については民法七〇九条に基づき損害賠償金の一部として、金三八〇万円及びこれに対する不法行為の日である昭和六一年七月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。

二  請求原因に対する認否及び被告らの主張

1  請求原因1の事実はすべて認める。

2(一)  請求原因2(一)の事実のうち、被告甲野が原告を蹴った回数、原告が被告甲野の行為により左下顎打撲、不正咬合(臼歯部開咬)の各傷害を負ったこと及び原告が昭和六一年一二月八日まで治療を余儀なくされたことは否認し、その余は認める。

(二)  同2(二)の事実のうち、第一段目は認めるが、その余は否認ないし争う。

3(一)  請求原因3(一)の事実のうち、被告甲野及び三橋校長が、本件当時被告市の公権力の行使にあたる公務員であったことは認めるが、その余は争う。

(二)  同3(二)の主張は争う。

国家賠償法一条一項にいう国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときに、被害者に対して損害賠償の責に任ずる者は、国又は公共団体に限られ、当該公務員は、いかなる場合も、被害者に対し直接には損害賠償責任を負担しないものと解すべきである。

4  請求原因4のうち、(一)の主張は争う。(二)の事実は知らない。

5  被告らの主張

(一) 本件の経緯

(1) 被告甲野は、昭和六一年四月ころ、同被告が担任をしていた本件中学校二年六組の生徒全員に対し、給食後の五時限目の授業の開始に支障がないようにするため、「遅くとも午後零時五〇分ころまでにはクラス全員が着席し、全員が一斉に給食をとることができるように」と指導していた。

(2) 同年七月三日、午前中の授業が午後零時四〇分に終了し、給食当番が給食の準備を始め、同五〇分ころには右準備が終了した。被告甲野も教室に入り、教室内の生徒が着席したのを見計らって食事開始の合図を出そうとしたところ、原告の席だけが空いていた。そのため、学級全体で原告が席に着くのを待ったが、二、三分待っても戻って来なかったので、被告甲野は、原告不在のまま食事開始の合図を出した。

(3) 被告甲野が、給食に手を付け、一口食べて顔を上げると、原告は既に着席して給食を食べようとしているところであった。

原告は、以前から宿題などの提出期限を遵守しなかったり、遅刻も多く、生活態度に問題のある生徒であった。今回も給食開始時刻に遅れて来たにも拘らず、遅刻について謝罪せず、被告甲野に隠れてひっそりと教室に入ってきたので、被告甲野は、叱責せざるを得ないと考えた。

(4) 被告甲野は、椅子に腰掛けていたが、原告を腰掛けている自分の前に正座させ、「何をしていたんだ」と問い質したが原告は黙り込んだままであった。

被告甲野は、更に「何で、こそこそ入って来るんだ。男らしくない。怒られたっていいから、もっと堂々と入口から入ってこい」といって原告を叱責したが、原告がやはり沈黙したままであったので、原告に反省の態度が認められないと感じ、思わずかっとなり、右足で原告の胸のあたりを蹴ったところ、原告は、身体をのけぞらせ、手を後方の床につけたが、無言のまますぐに元通り正座し直した。被告甲野は、原告がなお謝罪しないと思い、激昂し、左足を払うようにしたところ、左足の先が原告の右頬をかすめた

(二) 本件行為後の事情

(1) 被告甲野は、当然のことながら本件行為を深く反省しており、行政上の処分として、市教育委員会より昭和六一年七月二四日訓告処分を、昭和六二年一二月一〇日、傷害罪で罰金七万円の刑事処分を受けた。

(2) また、被告市は、原告側の要求を踏まえ、昭和六二年二月一三日、被告甲野を本件中学校二年六組の担任から外し、市教育センターでの研修を命じ、その後も市教育委員会での研修を命ずるなどし、その結果、被告甲野は、平成二年三月三一日まで三年以上もの長期間にわたり教壇に立つことができなかった。

(三) 本件の判断にあたっては、右(一)のとおり、本件行為に至るまでの過程において、原告の側に給食開始時間に遅れるなど、学校教育法一一条本文にいう懲戒を受けるのが相当と思われる行為が存在したこと、右(二)のとおり、本件行為後、被告甲野が既に十分過ぎる程の社会的制裁を受けていることが考慮されるべきである。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1の事実、同2(一)の事実中の被告甲野が原告を蹴った回数、左下顎打撲、不正咬合(臼歯部開咬)の各負傷の点及び治療期間の点を除くその余の事実及び同2(二)の第一段目の事実については、いずれも当事者間に争いがない。

二当事者間に争いのない右事実に後掲各証拠を総合すれば、次の事実を認めることができる。

1  本件中学校における被告甲野ら教師の生活指導

本件中学校では、昭和六一年当時、登校の際に、教師らによって服装チェック、遅刻者のチェックが行われており、服装が乱れている者、遅刻した者に対しては、廊下に正座させ、その姿勢のままで朝の自習を行わせるなど、厳しい事実上の懲戒が行われていた。被告甲野は、それら遅刻者の頭を拳骨で叩いたり、体育館使用についての校則を破った生徒を注意する際、その生徒の顔面を平手で殴って鼓膜を破る傷害を負わせるなど、有形力の行使を伴う懲戒を行っており、生徒たちから怖がられる存在であった。

三橋校長は、被告甲野のこのような行動について、同被告に対し注意を与えたり、指導をしたりすることは特になかった。(〈書証番号略〉、証人市川正夫、被告甲野本人)

2  本件中学校の給食指導

本件中学校の給食時間は、四時限目の授業が終了する午後零時四〇分ころから給食当番が配膳の準備にとりかかり、同五〇分ころには、生徒全員が着席し、全員揃ったところで「いただきます」のあいさつの後、食事を開始することとなっていた。しかし、授業終了の時刻や配膳に要する時間は、教科や給食の内容等によって多少の違いがあったので、零時五〇分を給食開始時刻とするということは厳格なものではなく、一応の目安とされていたものであった。被告甲野は、給食を生徒と一緒に教室でとることもあったが、体育館内にある体育教官室や職員室に運ばせて、そこで済ませることも多かった。(〈書証番号略〉、原告本人、被告甲野本人)

3  本件行為に至るまでの経緯

昭和六一年七月三日は、零時五〇分ころに給食の配膳が終了し、被告甲野は、日直の生徒に呼ばれ、生徒と一緒に給食をとるべく教室に入った。食事開始の合図を出そうと教室を見渡したところ、原告の席が空いていて、生徒の一人が「岸君がいない」と言ったので、同被告は、原告が戻って来るのを二、三分待ったが、原告は戻らず、原告不在のまま食事開始の合図を出した。同級生の小林和也が原告を呼びに教室を出て、一組の教室前の廊下で友人と話をしている原告を見付け、早く戻るように言い、同人と原告は一緒に教室に戻った。原告は、被告甲野が、日頃から遅刻などに厳しい態度を示していたので、叱られるのではないかと思い、ドアから入らずに廊下側の壁の下についている低い窓から身を縮めるようにして教室に入り、自分の席に着いて被告甲野の方を窺ったところ、同被告も、原告が自分の席に着いているのに気が付いた。(〈書証番号略〉、原告本人、被告甲野本人)

4  被告甲野の本件行為

被告甲野は、教室の生徒全員が給食を食べずに原告を待っていたのに、原告が遅れたことを詫びもしないでこそこそと教室に入ってきたことに腹を立て、原告を自分が腰掛けている椅子の前に正座させ、「隠れてこそこそ入ってくるな」と叱責したうえ、運動靴を履いている右足で原告の顎の辺りを一回蹴った。原告は、後ろにのけ反り、蹴られて痛みを感じた口の辺りを手で押さえたが、すぐに正座の姿勢に戻って黙っていたところ、被告甲野は、原告のこの態度を反省の色が見られないと判断し、もう一度原告を左足で蹴ったが、これは原告の左頬をかすっただけであった。この時、被告甲野は、原告の口から血が滲んでいるのに気付いたが、大した怪我ではあるまいと考えて原告を席に戻らせた。(〈書証番号略〉、原告本人、被告甲野本人)

5  原告の傷害の程度

原告は、本件行為によって、上前歯牙脱臼、下口唇裂傷、左下顎打撲の傷害を負い、上前歯牙脱臼については、翌七月四日から八月五日までの間合計六回、東京歯科大学千葉病院口腔外科に通院して、歯科医による診療を受け、右各傷害は治療したが、原告は、更に、その後も八月一四日から一二月八日までの間、経過観察のために右口腔外科に合計八回通院した(〈書証番号略〉)。なお、原告主張の不正咬合(臼歯部開咬)については、これを本件行為によって生じたものと認めるに足りる証拠はない。

三被告らの責任について

1  被告市の責任

被告甲野が本件当時被告市の公権力の行使にあたる公務員であったことは、当事者間に争いがなく、既に認定したとおり、被告甲野が、その職務である教育活動の過程において、原告に対して暴行を加え、傷害を負わせたものであるから、三橋校長の職務上の義務違反によって被告甲野の本件行為が誘発されたと認められるか否かにかかわりなく被告市は、国家賠償法一条一項に基づき、被告甲野の本件行為によって原告が被った損害を賠償すべき責任があるものと認められる。

2  被告甲野の責任

国又は公共団体の公務員がその職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合には、国又は公共団体が、その被害者に対して損害賠償の責任を負い(国家賠償法一条一項)、当該公務員個人は、直接被害者に対して損害賠償責任を負うことはなく、当該公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は当該公務員に対して求償権を有する(同法一条二項)ので、国又は公共団体からの当該公務員に対する求償権の行使という方法でのみ当該公務員に責任を負担させることができると解するのが相当である。

したがって、被告甲野の原告に対する損害賠償責任は認められない。

四損害について

1  慰謝料

(一) 前記認定のとおり、本件行為は、教室内の他の生徒たちが給食をとっている中で、ひとり原告を正座させて顔面を蹴ったものであり、屈辱感を与えるものであったことはいうまでもない。

(二) 被告甲野が、本件行為以前にも生徒を殴り、その生徒の鼓膜を破るという事故を起こしたことのあることは、先に認定したとおりであり、同被告は、打ち所が悪ければ手加減をしていても傷害を負わせる結果になることを経験上知っていたうえ、本件行為直後、原告の口の辺りから血が滲んでいるのに気付き、原告が負傷しているとわかったのに、傷害の程度を確認せず、これを放置し、原告に対して診療等の配慮もしなかった。(〈書証番号略〉、原告本人、被告甲野本人)

(三) 被告甲野は、本件行為の数日後、原告に対し、本件中学校の学年室において、一度謝罪したが、それ以外には、原告に対して特別な配慮はしなかった。原告は、本件行為以前は、特別学校を休むようなこともないごく普通の生徒であったが、本件行為後、一週間に二日くらいの割合でしばしば学校を休むようになり、中学三年に進級してからは、長期欠席をするようになってしまった。(原告本人、被告甲野本人)

(四) 更に、本件行為後、三橋校長は、被告甲野の報告に基づき本件行為に至った経緯、行為態様、原告の負傷の程度等について事故報告書を作成し、これを市教育委員会に提出した。ところが、右報告書の内容に一部不正確な点があり、原告は、再調査のうえ、これを訂正するよう求めたが、市教育委員会(市教育長)はこれに応じなかった。(〈書証番号略〉、被告甲野本人)

(五) 他方、被告甲野は、本件行為のあった翌日に、本件中学校教頭とともに、まき子のもとに謝罪に赴き、更に、その後、原告の治療費を支払うことを文書によって確約し、まき子に受領しては貰えなかったが、今回の不祥事を深く反省し、今後は絶対に体罰をしないことを約束した誓約書を同人に提示した(〈書証番号略〉、原告法定代理人、被告甲野本人)。

(六) 被告甲野は、行政上の処分として、市教育委員会より昭和六一年七月二四日訓告処分を、昭和六二年一二月一〇日傷害罪で罰金七万円の刑事処分を受け、更に、昭和六二年二月一三日からは、本件中学校二年六組の担任を外され、市教育センター、次いで市教育委員会での研修を命じられ、約三年間教壇を離れ、平成二年四月復帰した(〈書証番号略〉、被告甲野本人)。

(七) 以上の事実及びその他本件に顕れた諸事情を考慮すると、本件行為によって原告の被った身体的、精神的苦痛に対する慰謝料の額は、五〇万円が相当と認められる。

2  弁護士費用

原告が、原告訴訟代理人らに本件訴訟の追行を委任したことは記録上明らかであり、事案の内容、右認定の慰謝料その他諸般の事情に照し、本件不法行為による損害として被告市に負担させるべき弁護士費用の額は、五万円をもって相当と認める。

五結論

以上によれば、原告の被告市に対する請求は、そのうち金五五万円及び不法行為の日である昭和六一年七月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、原告の同被告に対するその余の請求及び被告甲野に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官河本誠之 裁判官遠藤きみ 裁判官平岩紀子)

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